レベルB2 · 第77課

クラビレーニョの飛行

主人と従士は目隠しをして、庭から一歩も動かない木馬にまたがり、それぞれが自分なりの旅の話を持ち帰ります。

ギュスターヴ・ドレの版画:宿屋の中庭で、村人や女たちに囲まれ、槍を掲げて馬にまたがる鎧姿のドン・キホーテ。
Gustave Doré, 1863. Public domain.

このレッスンで学ぶこと

読む前に

誰も実際には見ていない過去を語る、二つの部分からなる動詞に注目しましょう。ya habrán pasado la región del aire、yo no habría subido。この章では何も起こらないので、誰かが言うことのほとんどは推測で、スペイン語にはまさにそのための時制があります。

やさしいスペイン語で読む物語

Al anochecer entraron en el jardín cuatro salvajes vestidos de hiedra verde.

日が暮れると、緑のツタをまとった四人の野人が庭に入ってきました。

Traían a hombros un gran caballo de madera y lo pusieron de pie en el suelo.

彼らは大きな木馬を肩にかついでいて、それを地面にまっすぐ立てました。

Uno de ellos dijo que subiera en aquella máquina el que tuviese ánimo para ello.

その一人が、勇気のある者はこの機械に乗るがよいと言いました。

La condesa Trifaldi anunció que aquel era Clavileño el Alígero, el caballo del gigante.

トリファルディ伯爵夫人は、これこそ巨人の馬、俊足のクラビレーニョだと告げました。

Volaba por los aires guiado por una clavija, y llegaría a Candaya en poco más de tres horas.

それは栓で操られて空を飛び、三時間あまりでカンダーヤに着くというのです。

Solo podían montar dos, el caballero y su escudero, y tenían que ir vendados.

乗れるのは騎士とその従士の二人だけで、目隠しをしていかなければなりませんでした。

Si abrían los ojos a semejante altura se marearían y caerían al suelo.

そんな高さで目を開ければ、目が回って落ちてしまうというのです。

Sancho dijo que él no habría subido ni por una ínsula, y que el gigante habría podido mandar una mula.

サンチョは、島をもらえるとしても自分なら乗らなかっただろう、巨人はラバをよこすこともできただろうに、と言いました。

Añadió que de allí a Candaya había tres mil leguas y que en el camino se les haría de noche.

さらに、ここからカンダーヤまでは三千レグアもあり、途中で日が暮れてしまうだろうと付け加えました。

El duque le prometió que la ínsula tenía raíces hondas y que la encontraría donde la dejaba.

公爵は、島は深く根を張っているから、置いていった場所にちゃんとあると請け合いました。

Los duques insistieron, medio en burla y medio en serio, y Sancho acabó cediendo.

公爵夫妻は半分冗談、半分本気で迫り、サンチョはついに折れました。

Antes de subir dijo que, si no volvían, ya le habrían contado a Teresa lo que había pasado.

乗る前に彼は、もし戻らなかったら、そのころには誰かがテレサに事の次第を伝えているだろうと言いました。

Dijo también que él habría preferido morir en su cama y con su gente alrededor.

また、自分の寝床で家族に囲まれて死ぬほうがよかったとも言いました。

Se colocó don Quijote delante, y Sancho subió detrás, en las ancas, que eran duras como el mármol.

ドン・キホーテが前に座り、サンチョは後ろの、大理石のように硬い馬の尻に乗りました。

Pidió un cojín y le dijeron que Clavileño no sufría ningún adorno encima.

彼はクッションを求めましたが、クラビレーニョは背中に飾りものを一切許さないと言われました。

Los vendaron a los dos, y don Quijote tocó la clavija de la frente.

二人とも目隠しをされ、ドン・キホーテは額の栓に触れました。

Entonces toda la gente del jardín se puso a gritar que ya iban por los aires.

すると庭じゅうの人々が、もう空を飛んでいると叫び始めました。

Gritaban que subían más que los halcones y que a aquellas alturas ya se habrían perdido de vista.

鷹よりも高く昇っている、あんな高さではもう見えなくなっているだろう、と叫びました。

Los criados les acercaban unos fuelles grandes a la cara para que sintieran el viento del vuelo.

召使いたちは、飛行の風を感じさせるために、大きなふいごを二人の顔に向けて動かしました。

Después les llegaron estopas encendidas en cañas largas para que notasen el calor.

それから熱を感じさせるために、長い竿の先に燃える麻くずをつけて近づけました。

Don Quijote calculó en voz alta que ya habrían atravesado la región del aire.

ドン・キホーテは、今ごろはもう大気の層を越えたはずだと声に出して計算しました。

Dijo que estarían entrando en la del fuego y que no sabía cómo templar la clavija.

今は火の層に入っているところだろうが、栓をどう加減すればよいかわからない、と言いました。

Sancho, con la venda puesta, dijo que aquello no era región de fuego sino de chamusquina.

サンチョは目隠しをしたまま、ここは火の層ではなく焦げの層だと言いました。

Pidió que le bajaran un poco la venda, y su amo le contestó que ni se le ocurriera.

彼は目隠しを少し下げてほしいと頼みましたが、主人はそんなことは考えるなと答えました。

Le recordó que un escudero que abre los ojos habría deshecho el encantamiento entero.

目を開けた従士は魔法をすっかり台なしにしてしまうことになる、と念を押しました。

De pronto prendieron unas estopas en la cola del caballo, que iba llena de cohetes.

突然、花火がいっぱい詰まった馬の尾の麻くずに火がつけられました。

Clavileño estalló con un ruido enorme y los dos jinetes cayeron al suelo, chamuscados.

クラビレーニョはものすごい音を立てて破裂し、二人の乗り手は焦げて地面に落ちました。

Cuando se quitaron las vendas no había ni salvajes ni condesa ni dueñas.

目隠しを外すと、野人も伯爵夫人も侍女たちもいませんでした。

Solo quedaba el jardín vacío y unas damas desmayadas en la hierba.

残っていたのはがらんとした庭と、草の上で気を失って倒れている何人かの貴婦人だけでした。

Clavado en una lanza había un pergamino que decía que Malambruno se daba por satisfecho.

槍に羊皮紙が留めてあり、マランブルーノは満足したと書かれていました。

Bastaba con haber intentado la aventura, y las doce dueñas ya estaban lisas y sin barbas.

冒険を試みただけで十分で、十二人の侍女はもうひげのないつるつるの顔になっていました。

Sancho contó entonces que él sí había levantado un poco la venda por junto a las narices.

そこでサンチョは、実は鼻のあたりから目隠しを少し持ち上げていたと話しました。

Dijo que había visto la Tierra del tamaño de un grano de mostaza y los hombres como avellanas.

地球はからし種ほどの大きさで、人間はハシバミの実ほどにしか見えなかったと言いました。

La duquesa le hizo notar que entonces un solo hombre habría cubierto la Tierra entera.

公爵夫人は、それならたった一人の人間で地球全体が覆われてしまったはずだと指摘しました。

Sancho contestó que la había mirado por un ladito y que aun así la había visto toda.

サンチョは、ほんの片隅からのぞいただけだが、それでも全部見えたのだと答えました。

Contó además que se había apeado y que había jugado con siete cabrillas de colores.

さらに、馬から降りて、色とりどりの七匹の子ヤギと遊んだとも話しました。

Don Quijote no dijo nada delante de todos, pero luego le habló al oído.

ドン・キホーテはみんなの前では何も言いませんでしたが、あとでサンチョに耳打ちしました。

Le pidió que le creyese lo de la cueva de Montesinos, ya que él le creía lo del cielo.

自分はサンチョの空の話を信じるのだから、モンテシーノスの洞穴の話を信じてくれと頼んだのです。

語彙

木馬

el salvaje
野人
la hiedra
ツタ
la clavija
栓、くさび
las ancas
馬の尻
el jinete
乗り手
templar
加減する、調整する
a hombros
肩にかついで
de madera
木製の

公爵の舞台仕掛け

la venda
目隠し
vendar
目隠しをする
el fuelle
ふいご
la estopa
麻くず
el cohete
打ち上げ花火
estallar
破裂する
chamuscado
焦げた
la chamusquina
焦げくさいにおい

サンチョが見たと言うもの

el grano de mostaza
からし種
la avellana
ハシバミの実
la cabrilla
子ヤギ
apearse
(馬から)降りる
marearse
目が回る
el pergamino
羊皮紙
liso
つるつるの
por un ladito
ほんの片隅から

起きているだろうこと、起きていただろうこと

A estas alturas ya se habrán perdido de vista.

Ya habrán atravesado la región del aire.

Yo no habría subido ni por una ínsula.

どちらも同じつくりで、haber と、形の変わらない過去分詞を組み合わせます。違いはどの haber を使うかだけです。

時制haber例
未来完了habré, habrás, habrá, habremos, habréis, habránYa habrán llegado a Candaya.
過去未来完了habría, habrías, habría, habríamos, habríais, habríanYo no habría subido a ese caballo.

それぞれの本当の使い道

スペイン語の未来完了は、未来についての言明よりも、過去についての推測であることがずっと多く、ここが学習者の意表をつく点です。Ya habrán comido が、未来のある時点までに食べ終えているという意味になることはまずありません。実際の会話では もう食べたはずだ という意味です。わからないことを言う、丁寧で日常的な言い方なのです。

スペイン語本当の意味
¿Dónde está Sancho? Se habrá dormido.彼は眠ってしまったのだろう。
No contesta. Habrá salido.彼はたぶん出かけたのだろう。
Habrán sido las cinco cuando llegaron.五時ごろだったのだろう。

過去未来完了は、起こらなかった過去のための形です。次のレッスンで扱う第三種の条件文の主節になりますが、それだけでも十分に成り立ちます。yo habría preferido morir en mi cama、el gigante habría podido mandar una mula。

二つを並べて

habráhabría
Habrá llegado ya.(もう着いたと思う)Habría llegado antes en mula.(実際にはそうしなかった)
実際の過去、不確か現実でない過去、想像

空飛ぶ馬と最後の取引

クラビレーニョはセルバンテスの発明ではありません。空飛ぶ木馬は『千夜一夜物語』にも、ドン・キホーテがその馬にまたがりながら名前を挙げるフランスの物語『ピエールとマガローヌ』にも、いくつかの騎士道物語にも登場します。庭にいる誰もがその元ネタに気づくので、偽物はたやすく信じこませることができるのです。舞台効果はすべて当時のものです。風にはふいご、火の天球の熱には竿の先の燃える麻くず、そして花火を詰めた尾。それで機械は粉々になってしまいます。

大気の層や火の層についてのドン・キホーテの実況は、狂気ではありません。当時ヨーロッパのどの大学でも教えられていた標準的なアリストテレスの宇宙論で、火の天球は上層の大気と月のあいだにあるとされていました。彼は物理学をしているのです。狂っているのは、それを一歩も動いていない馬に当てはめていることです。

そして、このエピソード全体がそのためにあるような一言が来ます。サンチョは色とりどりの七匹の子ヤギという、見え透いた作り話をしました。ドン・キホーテは人前でそれをとがめません。待ってから近づき、取引をささやきます。わたしの洞穴を信じてくれれば、おまえの空を信じよう、と。小説の中で二人が一つの嘘をいっしょに支えることに同意するのはこれが初めてで、それが二人の関係を変えます。二人はもはや狂人と懐疑家ではありません。共犯者であり、ここから本の終わりまで、それぞれが相手の見ている世界を守り続けるのです。

セルバンテスの原文で · «Sancho, pues vos queréis que se os crea lo que…»

Sancho, pues vos queréis que se os crea lo que habéis visto en el cielo, yo quiero que vos me creáis a mí lo que vi en la cueva de Montesinos; y no os digo más.

サンチョよ、空で見たことを信じてもらいたいのなら、わしがモンテシーノスの洞窟で見たことも信じてもらいたい。それ以上は言わぬ。

彼はそれをサンチョの耳もとで言います。庭のほかの誰にも聞こえないようにで、この細部は言葉と同じくらい重要です。文法的にもそれだけで小さなレッスンになっています。habéis visto と受け身の se os crea という二つの複合形があり、望む動詞が二度、後ろに接続法を引き寄せています。que se os crea と que me creáis です。小説に与える影響はもっと大きなものです。これまではドン・キホーテが信じる側、サンチョが信じない側でした。ここでドン・キホーテは、とうてい信じられない嘘をついた従士を押さえながら、それを暴かずに交換を持ちかけます。このささやき以降、二人はだます者とだまされる者ではなく、同じ作り話を二人で支える相棒となり、読者はそれが友情なのか、それとも狂気が広がる瞬間なのかを決めなければなりません。

この文法項目を単独のページで

短い答え、ほかのレッスンでの同じ項目、そして避けたい間違い。

このスペイン語をセルバンテスの原文で

学んだばかりの項目が原文で使われている一節を、手を加えずに、形をひとつずつ解説しながら読みます。