レベルB2 · 第88課
羊飼いになる計画
帰り道、1年間武器を取ることを禁じられたドン・キホーテは、羊飼いになろうと決めます。最初に配るのは名前です。

このレッスンで学ぶこと
- スペイン語の接尾辞を見分け、それが元の語に何をするかを知る。
- 縮小辞を、大きさだけでなく愛情、軽蔑、取るに足りなさを表すために使う。
- 文章が、自分の属するジャンルを笑っているときに気づく。
読む前に
この章の大半は、一人の男が名前を作り出す場面です。どれもふつうの名前に語尾をくっつけたもので、語尾ごとに語に違う働きをします。読みながら集めていきましょう。あとの文法のセクションで語尾を分解しますが、これはスペイン語で最も役に立つものの一つです。やさしいスペイン語で読む物語
Vencido en Barcelona y obligado a no tomar las armas en un año, volvía a su pueblo.
バルセロナで敗れ、1年間武器を取らないと約束させられて、彼は村へ帰る途中だった。
Iba por el mismo camino por donde había salido, y sin prisa ninguna.
出てきたときと同じ道を、少しも急がずに進んでいた。
Andaba a pie parte del día, con Rocinante detrás y el rucio al lado.
一日のうちしばらくは歩き、ロシナンテが後ろに、ロバが横についていた。
Hablaba mucho más de lo que había hablado en todo el viaje anterior.
それまでの旅のあいだ全部よりも、ずっとよくしゃべった。
Un día llegaron al prado donde meses antes habían visto a unos pastores fingidos.
ある日二人は、数か月前に羊飼いのふりをした人々を見かけた牧場にやって来た。
Era gente rica del lugar, vestida de zagales, que representaba églogas en el campo.
それは土地の裕福な人々で、羊飼いの若者の格好をして、野原で牧歌劇を演じていたのだった。
Habían inventado una Arcadia de mentira para entretener el verano.
夏の退屈しのぎに、作り物のアルカディアをこしらえていたのだ。
Don Quijote se acordó de aquello y se le encendió una idea nueva.
ドン・キホーテはそれを思い出し、新しい考えに火がついた。
Si no podía ser caballero andante durante un año, sería pastor.
1年間遍歴の騎士でいられないのなら、羊飼いになろう。
Comprarían ovejas y todo lo demás que el oficio pidiera, sin reparar en gastos.
羊を買い、その稼業に必要なものは何でも、費用を惜しまずそろえよう。
Se irían por los montes, por las selvas y por los prados, cantando de día y de noche.
山々や森や牧場をめぐり、昼も夜も歌って歩こう。
Beberían agua de las fuentes y de los arroyos limpios, que allí no falta nunca.
泉や澄んだ小川の水を飲もう。あそこでは水が尽きることはない。
Comerían de lo que dieran las encinas y dormirían a la sombra de los sauces.
トキワガシの恵みを食べ、柳の木陰で眠ろう。
La caballería tenía sus libros, y la vida pastoril tenía los suyos.
騎士道には騎士道の本があり、牧人の暮らしにはまたそれの本があった。
Ya traía repartidos los nombres, que en aquel género es lo primero de todo.
名前はもう割り振ってあった。そのジャンルでは、それが何より先なのだ。
Él se llamaría el pastor Quijotiz, y Sancho tendría que llamarse el pastor Pancino.
自分は羊飼いキホーティス、サンチョは羊飼いパンシーノと名乗らねばならない。
Al cura, cuyo nombre no se prestaba, le pondrían el pastor Curiambro.
名前がうまく変えられない司祭は、羊飼いクリアンブロと呼ぼう。
El bachiller Sansón Carrasco sería el pastor Sansonino o el pastor Carrascón.
サンソン・カラスコは、羊飼いサンソニーノか羊飼いカラスコンだ。
Y el barbero maese Nicolás podría llamarse Miculoso, si le parecía bien.
床屋のニコラス親方は、響きが気に入ればミクローソと名乗ればよい。
Faltaban las pastoras, porque sin dama no hay égloga que valga nada.
まだ羊飼い娘が足りなかった。思い姫のいない牧歌など何の値打ちもないからだ。
Él cantaría a Dulcinea del Toboso, que sirve igual de pastora que de princesa.
自分はトボソのドゥルシネーアを歌おう。彼女は王女にも羊飼い娘にも同じようにふさわしい。
Sancho dijo que a la suya la llamaría Teresona, y explicó delante de todos por qué.
サンチョは、自分の女房はテレソナと呼ぶと言い、皆の前でその理由を説明した。
Aquel nombre le venía bien con su gordura y también con el propio que ya tenía.
その名は女房の太り具合にも、もともとの本名にもぴったりだというのだ。
Al cura no le pondrían pastora, dijo, por dar buen ejemplo al pueblo.
司祭には羊飼い娘はつけないでおこう、村によい手本を示すために、と彼は言った。
Don Quijote le fue contando los instrumentos que sonarían en aquellos montes.
ドン・キホーテは、あの山々で鳴り響くことになる楽器を一つずつ挙げていった。
Habría gaitas, tamborines, sonajas, rabeles y hasta unos albogues que Sancho no conocía.
バグパイプ、小太鼓、鈴、レベック、それにサンチョの知らないアルボゲまであるだろう。
Los albogues eran unas chapas de metal que suenan al chocar una con otra.
アルボゲとは、互いに打ち合わせると音が出る金属の板のことだった。
Y aprovechó para explicarle que las palabras que empiezan por al son moriscas.
そしてついでに、al で始まる言葉はモーロ人の言葉なのだと説明した。
Sancho lo aceptó todo de golpe, y con bastantes más ganas que su amo.
サンチョはすべてをすぐに受け入れ、それも主人よりずっと乗り気だった。
Le pareció que aquella vida era descansada, porque en ella se comía y se dormía.
食べて寝ることのある暮らしなので、のんびりしたものに思えたのだ。
Se ofreció a comprar él mismo los animales y a labrar cucharas de palo.
彼は自分で家畜を買い、木のさじを彫ろうと申し出た。
Dijo que su hija Sanchica les llevaría la comida al hato todos los días.
娘のサンチカが毎日、野営地まで食事を運んでくれるだろう、と言った。
Pero luego se acordó de que la muchacha era guapa y de que hay pastores maliciosos.
だがそこで、娘が器量よしであることと、たちの悪い羊飼いもいることを思い出した。
Y encadenó cuatro refranes seguidos hasta que su amo le mandó parar.
そしてことわざを四つ続けざまに並べ、主人にやめろと言われた。
Don Quijote iba componiendo versos mentalmente mientras andaba, y le salían tristes.
ドン・キホーテは歩きながら頭の中で詩を作ったが、どれも悲しいものになった。
Cambiaba de género literario, pero no cambiaba en nada su manera de vivir.
彼は文学のジャンルを変えていたが、生き方は少しも変えていなかった。
Seguía queriendo entrar en un libro, y lo único que hacía era mudar de estante.
相変わらず本の中に入りたがっていて、していることといえば棚を移ることだけだった。
Pasaba de las novelas de caballerías a las novelas pastoriles, y nada más.
騎士道物語から牧人小説へ移るだけで、それ以上ではなかった。
Aquella tarde los atropelló una piara de más de seiscientos cerdos que iba a la feria.
その日の午後、市場へ向かう600頭を超える豚の群れが二人を踏みつけていった。
Los dejó a los dos en el suelo, sucios y molidos, entre gruñidos y polvo.
豚の鳴き声と土ぼこりの中、二人は泥まみれで打ちのめされ、地面に転がった。
Don Quijote dijo que se lo merecía por vencido, y no se quejó más.
ドン・キホーテは、敗れた者にはふさわしいことだと言い、それ以上は嘆かなかった。
Los pastores Quijotiz y Pancino siguieron su camino a pie, entre el polvo.
羊飼いキホーティスと羊飼いパンシーノは、土ぼこりの中を歩いて旅を続けた。
語彙
牧人の野
- el pastor
- 羊飼い
- el zagal
- 羊飼いの若者
- la oveja
- 羊
- el hato
- 群れ、野営地
- la encina
- トキワガシ
- el sauce
- 柳
- el arroyo
- 小川
- el prado
- 牧草地
作り物の文学
- la égloga
- 牧歌(エクローグ)
- fingido
- 見せかけの
- el género
- ジャンル
- pastoril
- 牧人の、牧歌的な
- representar
- 演じる、上演する
- componer versos
- 詩を作る
- mudar de estante
- 棚を移る
- la gaita
- バグパイプ
地上に戻る
- la cuchara de palo
- 木のさじ
- la piara
- 豚の群れ
- atropellar
- ひく、踏みつける
- el gruñido
- (豚などの)ぶうぶうという鳴き声
- el polvo
- ほこり
- descansado
- のんびりした、楽な
- malicioso
- たちの悪い、ずるい
- la gordura
- 太っていること
接尾辞:スペイン語が新しい語を作る仕組み
Yo seré el pastor Quijotiz y tú el pastor Pancino.
A la mía la llamaré Teresona, por su gordura.
El bachiller será Sansonino o Carrascón, como quiera.
スペイン語は古い語に語尾をつけて新しい語を作ります。しかも話し言葉の中で、一日じゅう絶えずそうしています。これは飾りでもなければ、子どもっぽいことでもありません。接尾辞をまったく使わない話者は、単語がすべて正しくても、平板で少し外国人っぽく聞こえます。
1. 縮小辞、そしてそれが大きさの話ではない理由
| 形 | 見かけの意味 | 実際に言っていること |
|---|---|---|
| un momentito | 小さな瞬間 | 少し待ってくださいね |
| un cafécito | 小さなコーヒー | 気さくな一杯、大きさは問わない |
| ¿Leoncitos a mí? | 小さなライオンたち | 感心なんかしてやらない |
| ahorita | ちょっとした今 | 国によって、今すぐ、または1時間後 |
| pobrecito | 小さな貧しい人 | 同情、そしてしばしば見下し |
基本は-itoです。-illoはスペイン南部でよく使われ、少しからかう響きになることがよくあります。-ínは北部のものです。-e、-n、-rで終わる語には-citoがつきます。cochecito、jovencito、amorcito。音を保つための綴りの変化に注意しましょう。chicoはchiquitoに、amigoはamiguitoになります。
2. 増大辞
| 語尾 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| -ón | un hombrón | 大男、感心または警戒を込めて |
| 動詞に-ón | un mandón, un preguntón | それをやりすぎる人 |
| -azo | un cochazo | すごい車 |
| もう一度-azo | un portazo, un codazo | そのもので与える一撃 |
| -ote | grandote, muchachote | 大きくて少し不器用 |
ここには落とし穴が二つあります。-ónは性も意味もすっかり変えてしまうことがあります。la sillaは椅子、el sillónはひじ掛け椅子、la rataはドブネズミでel ratónはハツカネズミです。また-azoには表の中の無関係な二つの意味があるので、un golazoは見事なゴールですが、un balonazoはボールが当たることです。
3. 意地の悪い接尾辞
-ejo、-ucho、-astroはけなすためのものです。Un librejoはくだらない本、una casuchaはあばら家、un poetastroはへぼ詩人です。見分けられるようにしておきましょう。わざと失礼にする語尾なので、使うのは控えめに。
4. セルバンテスはこれで何をしているのか
| 名前 | 元になった語 | 語尾 |
|---|---|---|
| Quijotiz | Quijote | 詩的に見せかけた語尾 |
| Pancino | Panza | 縮小辞、つまり小さなおなか |
| Sansonino | Sansón | 巨人の名の縮小形 |
| Carrascón | Carrasco | 増大辞 |
| Teresona | Teresa | 増大辞、しかも理由を口にする |
牧人小説にはネモローソやサリシオという名の羊飼いがあふれていました。ドン・キホーテは床屋と司祭と農夫の姓から、まるで機械のように自分版の名前を作り出し、その機械の仕組みが透けて見えるところが笑いどころです。続いてサンチョは妻の名前に「大きい」を意味する語尾をつけ、彼女は太っているからぴったりだと皆の前で説明します。ジャンルと村との隔たりが、まるごと一語に収まっているのです。
もう一つの流行ジャンル
16世紀にとっての牧人小説は、15世紀にとっての騎士道物語のようなものでした。誰もが読み、誰も本気では信じておらず、描かれる田園はスペインのどの田園とも関係がありませんでした。その羊飼いたちは変装した貴族で、韻文で話し、毛を刈ることなど一度もなく、小川のほとりで優雅に苦しんでいました。セルバンテス自身も一作書いています。La Galateaは1585年に出て、そこそこ売れました。彼は30年間続編を約束し続けましたが、ついに書きませんでした。死の床で書いた最後の本の献辞でも、またそれに触れています。
つまりこの章は、部外者がジャンルを嘲笑しているのではありません。自分で作った舟を燃やしている男なのです。ドン・キホーテは、柳の下で歌い、水晶のような小川の水を飲む暮らしについて、長く美しく、まったく型どおりの演説で牧人の生活を提案します。するとサンチョはすぐにそれを食べ物と眠りと木のさじに置き換えます。そこへ600頭の豚の群れが二人の上を踏み越えていくのです。
笑いの下にある要点は、笑いよりも重いものです。騎士はやめろと命じられ、1日もしないうちに、中で生きるための別の本を見つけてしまいました。彼は治っていません。自分を破滅させた図書室の一つの棚から、その隣の棚へ移っただけです。最後に彼を止めるのは、議論でも敗北でもなく、3章先に待つ彼自身の人生の終わりです。
セルバンテスの原文で · «llamándome yo el pastor Quijotiz…»
llamándome yo el pastor Quijotiz, y tú el pastor Pancino, nos andaremos por los montes, por las selvas y por los prados
わしは羊飼いキホティス、おまえは羊飼いパンシーノと名乗り、山や森や牧場をさすらおうではないか
後編第67章より。このレッスンは二つの作り名の中に収まります。Quijotizは、この人物が第1章で自分で作った姓に、牧人小説から借りた語尾をつけたものです。そこでは羊飼いがサリシオやネモローソといった名で呼ばれています。つまり偽の騎士名の上に偽の詩的な名を重ねた、二重の作り事です。PancinoはPanza(おなか)の縮小形で、「小さな太鼓腹」のような意味になります。農夫から文学的な名前を作ろうとするとこうなるのです。残りの部分のリズムにも注目しましょう。前置詞を繰り返す三つの並列句、por los montes, por las selvas y por los prados。これは彼がまねているジャンルの響きで、彼はそれを完璧に再現します。それこそが問題なのです。サンチョは1ページ後、妻を増大辞つきのTeresonaと名づけて答え、太っているからこの語尾が合うのだと声に出して説明します。詩的な語尾と正直な語尾、その二つの語尾の隔たりは、ドン・キホーテが住みたい本と、実際に歩いている土地との隔たりなのです。
