レベルB2 · 第84課

バルセロナに着く

ドン・キホーテとサンチョは初めて海を目にします。そして町のある屋敷で、青銅の頭が二人に話しかけます。

ギュスターヴ・ドレの版画:風車の羽根で馬もろとも空中に逆さまに投げ上げられるドン・キホーテ。サンチョ・パンサがロバの上から見ている。
Gustave Doré, 1863. Public domain.

このレッスンで学ぶこと

読む前に

場所の描写のしかたに注目しましょう。スペイン語では、何があるかを言うこともあれば(había una mesa de jaspe)、すでにわかっているものがどこにあるかを言うこともあり(sobre el agua estaban las galeras)、あるものが何であるかを言うこともあります(era el mar)。三つの動詞に三つの役割があり、入れ替えることはできません。

やさしいスペイン語で読む物語

Don Quijote y Sancho llegaron a la playa de Barcelona la víspera de San Juan, de noche.

ドン・キホーテとサンチョは、聖ヨハネの日の前夜、夜のうちにバルセロナの浜辺に着きました。

Venían de pasar tres días escondidos entre bandoleros, por atajos y sendas encubiertas.

二人は三日間、山賊たちに混じって身を隠し、近道や人目につかない小道を通ってきたのでした。

Se quedaron esperando el día, don Quijote a caballo y sin desarmarse.

二人は夜が明けるのを待ちました。ドン・キホーテは馬に乗ったまま、甲冑も脱がずにいました。

No tardó mucho en aclararse el cielo por el este y en salir la aurora.

ほどなく東の空が明るくなり、曙が昇ってきました。

Con ella llegó también ruido de chirimías, de tambores y de cascabeles.

それとともに、ショームや太鼓や小さな鈴の音も聞こえてきました。

Delante de ellos, donde no había habido nada, apareció una cosa enorme y movida.

二人の目の前、何もなかったところに、巨大で動くものが現れました。

Era el mar, y ninguno de los dos lo había visto en toda su vida.

それは海でした。二人とも生まれてこのかた一度も見たことがありませんでした。

Les pareció anchísimo, mucho mayor que las lagunas de Ruidera que habían visto en la Mancha.

海はとてつもなく広く見えました。ラ・マンチャで見たルイデラの湖沼よりはるかに大きかったのです。

Sobre el agua estaban las galeras, con los toldos quitados y las banderas al viento.

水の上にはガレー船が浮かび、日よけの幕を外し、旗を風になびかせていました。

Dentro sonaban clarines y trompetas, y el viento traía olor a sal y ruido de remos.

船の中では喇叭やトランペットが鳴り、風が潮の香りと櫂の音を運んできました。

Las galeras empezaron a moverse y a hacer como si pelearan unas con otras.

ガレー船は動き出し、互いに戦っているかのようにふるまい始めました。

Dispararon toda su artillería, y respondió la de las murallas de la ciudad.

ガレー船がありったけの大砲を撃つと、町の城壁の大砲がそれに応えました。

El agua saltaba, el aire se llenó de humo y la tierra temblaba con el estruendo.

水しぶきが上がり、あたりは煙に包まれ、轟音で大地が揺れました。

Por la playa venían corriendo hacia ellos muchos jinetes con libreas vistosas.

浜辺を、華やかなお仕着せを着た大勢の騎手が二人のほうへ駆けてきました。

Sancho no llegaba a entender cómo podían tener tantos pies aquellos bultos del mar.

サンチョには、海に浮かぶあの大きな塊にどうしてあんなにたくさんの足があるのか、どうしてもわかりませんでした。

Uno de los jinetes se adelantó y saludó a don Quijote a voces delante de todos.

騎手の一人が進み出て、皆の前で大声でドン・キホーテにあいさつしました。

Lo llamó espejo, farol y norte de toda la caballería andante.

彼はドン・キホーテを、遍歴の騎士道全体の鏡であり、灯台であり、北極星であると呼びました。

Dijo además que era el verdadero, y no el falso de las historias que habían salido aquel año.

さらに、こちらこそが本物で、その年に出た物語に描かれた偽物とは違うと言いました。

Al entrar en la ciudad, dos muchachos les metieron unas matas de aliaga bajo las colas.

町に入るとき、二人の少年が動物たちの尻尾の下にハリエニシダの束を押し込みました。

Rocinante y el rucio dieron mil corcovos y echaron a sus dueños al suelo.

ロシナンテとロバは何度も跳ね上がり、主人たちを地面に振り落としました。

Los recibió en su casa un caballero rico de la ciudad, don Antonio Moreno.

町の裕福な紳士ドン・アントニオ・モレーノが、二人を屋敷に迎え入れました。

Era hombre discreto y aficionado a divertirse, pero sin hacer daño a nadie.

彼は分別のある人で、楽しむことが好きでしたが、誰にも害を与えることはありませんでした。

Paseó a don Quijote por las calles con un cartel cosido a la espalda.

彼は背中に貼り紙を縫いつけたドン・キホーテを連れて、通りを練り歩きました。

El cartel decía su nombre, y toda Barcelona salió a mirarlo como a un mono amaestrado.

貼り紙には彼の名前が書かれていて、バルセロナじゅうの人が、芸を仕込まれた猿でも見るように彼を見に出てきました。

En una sala apartada de aquella casa había una mesa de jaspe sobre un pie de lo mismo.

その屋敷の奥まった部屋には、同じ石の台座に載った碧玉のテーブルがありました。

Encima de la mesa había una cabeza de bronce, como de emperador romano.

テーブルの上には、ローマ皇帝のような青銅の頭がありました。

Don Antonio le contó en secreto que era una cabeza encantada y que respondía al oído.

ドン・アントニオはこっそりと、それは魔法の頭で、耳打ちされたことに何でも答えるのだと教えました。

Le explicó que los viernes estaba muda y que había que esperar al día siguiente.

金曜日には口をきかないので、翌日まで待たなければならないと説明しました。

Al otro día se encerraron en la sala unas cuantas personas y fueron preguntando por turno.

翌日、何人かが部屋にこもり、順番に質問していきました。

A una dama que preguntó qué haría para ser hermosa le contestó que fuese muy honesta.

美しくなるにはどうすればよいかと尋ねた婦人には、とても貞淑であれと答えました。

A otra, que quería saber si su marido la quería, le dijo que mirase cómo la trataba.

夫に愛されているかどうか知りたがった別の婦人には、夫が自分をどう扱っているかを見よと言いました。

A un caballero que preguntó por los deseos de su hijo mayor le contestó que enterrarlo.

長男が何を望んでいるかと尋ねた紳士には、あなたを埋葬することだと答えました。

Sancho preguntó por su gobierno, por su mujer y por sus hijos.

サンチョは、自分の総督の地位のこと、妻のこと、子どもたちのことを尋ねました。

Le dijo que en su casa mandaría, y que si volvía a ella los vería a todos.

頭は、おまえは自分の家では主人として命令する、家に帰れば皆に会えるだろう、と答えました。

Sancho dijo que aquello no lo dijera mejor el profeta Perogrullo.

サンチョは、預言者ペログルーリョでもこれ以上うまくは言えなかっただろうと言いました。

Don Quijote preguntó por la cueva de Montesinos y por los azotes de su escudero.

ドン・キホーテは、モンテシーノスの洞窟のことと、従士の鞭打ちのことを尋ねました。

La cabeza contestó que de lo de la cueva había mucho que decir, de todo tenía.

頭は、洞窟の件については言うべきことがたくさんある、何もかもが少しずつ混じっていると答えました。

Añadió que los azotes irían despacio y que el desencanto llegaría a su debido efecto.

さらに、鞭打ちはゆっくり進むが、魔法はしかるべき時に解けるだろうと付け加えました。

La maravilla tenía su explicación, y era más sencilla de lo que parecía.

その驚異には種がありました。しかも見かけよりずっと単純なものでした。

El pie de la mesa era hueco, la sala de abajo también, y los unía un tubo de hojalata.

テーブルの台座は空洞で、下の部屋も同じく空洞になっており、ブリキの管が両者をつないでいたのです。

Abajo estaba un sobrino de don Antonio, estudiante agudo, con la boca pegada al tubo.

下にはドン・アントニオの甥で、頭の切れる学生が、管に口を当てて座っていました。

Pero eso se supo después, y la cabeza duró todavía diez o doce días.

でも、それがわかったのはあとのことで、頭はさらに十日か十二日ほど続きました。

Aquella noche don Quijote se acostó creyendo que el bronce le había hablado.

その夜、ドン・キホーテは、青銅が自分に話しかけたのだと信じて眠りにつきました。

語彙

海とガレー船

la víspera
前日、前夜
la aurora
曙
la laguna
潟、湖
el toldo
日よけの幕
el olor a sal
潮の香り
el bulto
形、大きな塊
ancho
広い
saltar
跳ねる

祭りの日の町

la muralla
城壁
la artillería
大砲、砲兵隊
disparar
発射する、撃つ
la librea
お仕着せ
el cartel
貼り紙
amaestrado
調教された
el corcovo
(馬などが)跳ね上がること
vistoso
華やかな、目を引く

魔法の頭

el jaspe
碧玉
el bronce
青銅
hueco
空洞の
la hojalata
ブリキ
el tubo
管
mudo
口のきけない
al oído
耳もとで、ささやいて
la maravilla
驚異、不思議なこと

場所を描写する hay、está、es

En una sala apartada había una mesa de jaspe.

Sobre el agua estaban las galeras, con los toldos quitados.

Era el mar, y ninguno de los dos lo había visto nunca.

三つの文はどれも登場人物の目の前にあるものを描写していて、三つの動詞のどれも入れ替えることはできません。選択の決め手は場所ではありません。聞き手がそのものをすでに知っているかどうかです。

動詞役目後ろに来るもの
hay, había, habrá何かを初めて場面に登場させるun, una, unos, dos, mucho, nada, algo
estar聞き手がすでに思い浮かべているものの位置を示すel, la, los, las, mi, este, a name
ser特定する、分類する「それは何か」に答える名詞

実用的な見分け方は冠詞です。✓ Hay una mesa en la sala。✗ Hay la mesa en la sala。✓ La mesa está en la sala。✗ La mesa hay en la sala。この習慣ひとつで、ほとんどの誤りがたちまち消えます。

Hay never becomes plural

Hay は形が変わりません。había も同じです。テーブルが一つでも四十でも、動詞は動きません。✓ Había una galera、✓ Había cuarenta galeras。✗ Habían cuarenta galeras。いくつかの国ではネイティブも habían と言いますが、書き言葉では今でも誤りとされます。

大きさを比べる。この章で一日じゅうしていること

形例
más queEl mar es más ancho que las lagunas.
mayor que, menor queMucho mayor que las lagunas de Ruidera.
tan comoNo es tan hondo como parece.
-ísimoLes pareció anchísimo.

注意点が二つあります。比較級の前で意味を強めるのは mucho で、muy ではありません。✓ mucho mayor、✗ muy mayor。また、セルバンテスは harto más を使っています。これは mucho más の古い言い方で、今では主に「うんざりした」という意味の estoy harto に残っています。

小説で唯一の大都市

ドン・キホーテが小説全体を通じて足を踏み入れる大都市はここだけです。それまでの出来事はすべて、村、宿屋、街道、山、そして一軒の田舎屋敷で起きています。バルセロナには海があり、造船所があり、印刷所があり、副王がいて、群衆がいます。そしてそのどれもが、わずか数章のうちに彼に不利な形で使われます。セルバンテスはこの町を知っていて、好きでもありました。聖ヨハネの日の朝の港を描く熱のこもった筆は皮肉ではありません。皮肉なのは、その後の滞在のほうです。

覚えておきたいのは貼り紙という細部です。ドン・アントニオ・モレーノは、誰にも害を与えずに楽しむ人とはっきり描かれています。語り手は彼について、人を傷つける冗談は冗談ではなく、第三者に害を与える価値のある娯楽などないとまで述べています。それなのに彼は、町じゅうの人が指させるよう、客の背中に貼り紙を縫いつけるのです。この原則と行いのずれは、公爵夫妻が見せたずれと同じで、セルバンテスはそれについて何も論評しません。ただ、通りにいた名もないカタルーニャ人の一人に、この男は狂っているが、それをけしかける者はもっと狂っている、という当たり前のことを言わせます。そして屋敷の者たちに、余計な口出しをするなと彼に言い返させるのです。

この頭には実在の祖先と、実際の結末があります。中世の伝説では、話す青銅の頭はアルベルトゥス・マグヌスやロジャー・ベーコンが作ったとされ、隠した管を使う機械仕掛けの話す装置は、娯楽として実際に作られていました。セルバンテスは種明かしを余すところなくします。管、空洞の台座、学生の甥。そしてこの章でもっとも素っ気ない一文を付け加えます。頭は十日か十二日ほど続いたが、異端審問所がそれを聞きつけて壊すよう命じた、と。

原文のセルバンテス · «vieron el mar, hasta entonces dellos no visto…»

vieron el mar, hasta entonces dellos no visto; parecióles espaciosísimo y largo, harto más que las lagunas de Ruidera, que en la Mancha habían visto

二人はそれまで見たことのなかった海を見ました。それは、ラ・マンチャで見たルイデーラの湖よりもはるかに広く長く感じられました

内陸の村から来た二人の男が地中海を眺めます。セルバンテスは、彼らの世界の外から大げさな形容詞をひとつも持ち込みません。彼は海を、二人がそれまでに見た唯一の大きな水、ラ・マンチャのルイデラの湖沼と比べて測ります。ドン・キホーテが数章前、モンテシーノスの洞窟に降りたときに訪れた場所です。だからこそこの比較があるのです。飾りではありません。二人の経験の中で、海に挑めるほど大きなものはそれしかなかったのです。文法もゆっくり読む価値があります。Dellos は de ellos を一語にしたもので、この時代には普通でした。Parecióles は代名詞を動詞の後ろにつけています。Espaciosísimo はこのコースで何度も出会っている最上級です。そして harto más は mucho más の古い形で、今では主に estoy harto「もううんざりだ」に残っています。レパントの海戦で兵士として戦い、アルジェで捕虜となった男が、海を一度も見たことのない二人の目を通して海を描いています。しかもそのために、自分は一歩引いているのです。

この文法項目を単独のページで

短い答え、ほかのレッスンでの同じ項目、そして避けたい間違い。