レベルB2 · 第70課
ドゥルシネーアが六レアルを借りたいと頼む
ドン・キホーテは洞穴で見たものを語ります。水晶の宮殿、口をきく死者、そして魔法にかけられ、彼に少しばかりの借金を頼むドゥルシネーアです。

このレッスンで学ぶこと
- 事実ではないことについて話し、もしそうだったら何が起こるかを言う。
- si の文を、それが求める二つの時制で組み立てる。
- 今事実でないことと、当時事実でなかったことを区別する。
読む前に
このテキストには si を使った文が八つあります。読みながら二つのことに注目してください。一つは si の直後にどの時制が来るか、もう一つは文のもう半分にどの時制があるかです。両者が同じになることは決してなく、組み合わせは決まっています。スペイン語はこの点で英語よりはるかに厳格で、ある特定の組み合わせはまったく許されません。やさしいスペイン語で読む物語
Recién sacado de la cueva, don Quijote contó que allá abajo se había quedado dormido.
洞穴から引き上げられたばかりのドン・キホーテは、下で眠り込んでしまったのだと話しました。
Dijo que se despertó en un prado verde con un palacio de cristal en medio.
目を覚ますと緑の草地にいて、その真ん中に水晶の宮殿が建っていた、と彼は言いました。
De la puerta de aquel palacio salió un anciano de barba blanca hasta la cintura.
その宮殿の扉から、腰まで届く白いひげの老人が出てきました。
No llevaba arma ninguna y caminaba despacio, con un rosario de cuentas gordas en la mano.
老人は武器を何ひとつ持たず、大きな玉のロザリオを手に、ゆっくりと歩いていました。
Era Montesinos, dijo, que llevaba siglos encantado allá abajo con toda su parentela.
それはモンテシーノスで、一族もろとも何世紀も前から下で魔法にかけられているのだ、と彼は言いました。
Si aquel palacio estuviera en la superficie, añadió, sería la mayor maravilla de España.
もしあの宮殿が地上にあったなら、スペイン一の驚異だろう、と彼は付け加えました。
Pero como está bajo tierra, nadie lo cree y nadie baja nunca a verlo.
けれども地下にあるので、誰も信じず、誰も見に下りてこないのだと。
Montesinos lo llevó a una sala fría donde había un sepulcro de mármol muy grande.
モンテシーノスは彼を冷たい広間へ連れて行きました。そこにはとても大きな大理石の墓がありました。
Encima estaba tendido Durandarte, muerto desde hacía quinientos años y hablando en voz baja.
その上にはドゥランダルテが横たわっていました。五百年前に死んだのに、小声で話していました。
Se quejaba de su suerte como si acabara de morirse aquella misma mañana de mayo.
まるでその五月の朝に死んだばかりであるかのように、彼は自分の運命を嘆いていました。
Montesinos le prometió que un caballero vendría por fin a deshacer aquel encanto tan largo.
モンテシーノスは彼に、いつかついに一人の騎士が来て、この長い長い魔法を解いてくれると約束しました。
Durandarte solo suspiró y dijo que hubiera paciencia y que se barajase de nuevo.
ドゥランダルテはため息をつくばかりで、辛抱して、もう一度カードを切り直せと言いました。
Después pasaron tres labradoras saltando por el prado, alegres, como si fueran a una fiesta.
それから、三人の農婦が、まるで祭りに行くかのように楽しげに、草地を跳ねながら通り過ぎました。
Don Quijote reconoció en una de ellas a Dulcinea del Toboso, saltando como las otras.
そのうちの一人に、ドン・キホーテはトボソのドゥルシネーアを見てとりました。ほかの二人と同じように跳ねていました。
Estaba encantada en la misma aldeana que Sancho le había señalado en el camino.
彼女は、サンチョが道中で彼に指さしたあの村娘の姿に変えられていたのです。
Una compañera se le acercó de parte de la señora y le habló muy deprisa.
連れの一人が、主人に代わって彼に近づき、とても早口で話しかけました。
Le pidió, en nombre de Dulcinea, seis reales prestados sobre un faldellín de algodón nuevo.
その娘はドゥルシネーアの名において、新しい木綿の下スカートを担保に、六レアル貸してほしいと頼みました。
Don Quijote dijo que si hubiera tenido seis reales se los habría dado enteros.
ドン・キホーテは、もし六レアル持っていたら、六レアルまるごと渡していただろうと言いました。
Como solo llevaba cuatro encima, le dio los cuatro y se disculpó por los otros dos.
手元には四レアルしかなかったので、その四レアルを渡し、残りの二レアルについてはわびました。
Sancho se llevó las manos a la cabeza y no supo qué decir al principio.
サンチョは頭を抱え、最初は何と言っていいかわかりませんでした。
Dijo después que si su amo no estuviera loco, no contaría una cosa así.
それから、もし旦那が狂っていなければ、こんな話をするはずがないと言いました。
Y que si aquello fuera verdad, las princesas encantadas no empeñarían la ropa por cuatro reales.
そして、もしそれが本当なら、魔法にかけられたお姫さまが四レアルのために服を質に入れたりはしないだろうと。
Don Quijote contestó que había estado tres días y tres noches allá abajo.
ドン・キホーテは、自分は下に三日三晩いたのだと答えました。
Los otros dos le juraron que no había pasado ni una hora desde que bajó.
ほかの二人は、彼が下りてから一時間もたっていないと誓いました。
Él dijo que si el tiempo corriera igual bajo tierra que arriba, no habría encantamiento posible.
もし地下でも地上と同じように時が流れるなら、魔法などまったくありえないだろう、と彼は言いました。
Sancho pensó que, si él contara aquello en su pueblo, nadie lo dejaría entrar en la iglesia.
もし自分がこんな話を村でしたら、誰も教会に入れてくれないだろう、とサンチョは思いました。
Desde aquel día ni el escudero ni el guía supieron qué pensar de su amo.
その日から、従士も案内人も、主人をどう思えばいいのかわからなくなりました。
El detalle de los seis reales lo estropeaba todo, porque era demasiado pequeño para ser mentira.
六レアルという細部がすべてを台無しにしました。嘘にしては小さすぎたからです。
Un embustero habría inventado coronas de oro y caballos con las crines de plata.
嘘つきなら、金の冠や、銀のたてがみの馬をでっち上げたことでしょう。
No habría inventado un préstamo de aldea con una prenda de algodón de por medio.
木綿の衣類を質草にした村の貸し借りなど、でっち上げはしなかったでしょう。
Y sin embargo el caballero lo contaba muy serio, sin adornar nada y sin reírse.
それなのに騎士は、何ひとつ飾らず、一度も笑わずに、大まじめにそれを語ったのです。
Sancho decidió creerle a medias, que era lo único que le dejaba seguir a su lado.
サンチョは半分だけ信じることにしました。それが、彼のそばに居続けられる唯一の方法だったのです。
語彙
地下の宮殿
- el cristal
- 水晶、ガラス
- el sepulcro
- 墓
- el mármol
- 大理石
- la parentela
- 一族
- la superficie
- 地表
- la cintura
- 腰
- el encantamiento
- 魔法
- suspirar
- ため息をつく
村のお金
- el préstamo
- 貸し借り、借金
- prestado
- 借りて、貸して
- empeñar
- 質に入れる
- la prenda
- 質草
- el faldellín
- 下スカート
- el algodón
- 木綿
- la corona
- クラウン金貨
- la plata
- 銀
信じるか、信じないか
- el embustero
- 嘘つき
- adornar
- 飾る、脚色する
- jurar
- 誓う
- estropear
- 台無しにする
- a medias
- 半分だけ、中途半端に
- la aldeana
- 村娘
- barajar
- カードを切る
- la crin
- たてがみ
Si tuviera seis reales, se los daría
Si aquel palacio estuviera en la superficie, sería la maravilla de España.
Si aquello fuera verdad, las princesas no empeñarían la ropa.
Si hubiera tenido seis reales, se los habría dado enteros.
スペイン語の si の文には三つの型があり、どの型を選ぶかで、そのことがどれくらいありうると考えているかが表れます。二つの部分はがっちり組み合わさっていて、前半を選べば後半は自動的に決まります。
第1型:十分ありうること
Si baja a la cueva, verá el palacio. si の後は直説法現在、もう半分は未来形です。これはすでに知っている型です。
第2型:今は事実でないこと
Si aquel palacio estuviera en la superficie, sería la maravilla de España. si の後は接続法過去、もう半分は過去未来(条件法)です。宮殿は地上にはなく、話し手もそれを知っています。これがこのレッスンの内容です。
第3型:当時は事実でなかったこと
Si hubiera tenido seis reales, se los habría dado enteros. si の後は接続法過去完了、もう半分は過去未来完了です。彼は六レアル持っていなかったので、今となってはどうしようもありません。この型は後でしっかり学びますが、このテキストでは二回使われているので、見分けられるようにしておく価値があります。
| si の後 | もう半分 | 意味 |
|---|---|---|
| presente | futuro | 現実の可能性 |
| imperfecto de subjuntivo | condicional | 現在の事実に反する |
| pluscuamperfecto de subjuntivo | condicional compuesto | 過去の事実に反する |
例外のない規則
「もし」を意味する si の後では、スペイン語は未来形も過去未来(条件法)も決して使いません。どんな文体でも、どの時代でも、ただの一度もです。✗ Si tendría dinero という言い方は存在しません。過去未来(条件法)は文のもう半分にだけ置かれます。二つの部分は自由に順序を入れ替えられ、si の部分が後に来るときはコンマが消えます。Sería la maravilla de España si estuviera en la superficie。
知っておくとよい近い仲間が二つあります。Como si は常に第2型か第3型をとり、それ以外はありません。また si は No sé si es verdad のように「〜かどうか」の意味にもなります。その場合は条件ではないので、ここで述べた規則はどれも当てはまりません。
四レアルと嘘の値段
real は小銭でした。四レアルは日雇い労働者の二日分ほどの稼ぎにあたり、パンは買えてもそれ以上はあまり買えない額でした。その程度の借金のために衣類を質に入れるのは、スペインの村ではまったくありふれた取引でした。セルバンテスはその金額を正確に知っていました。彼は長年徴税吏として、持ってもいない人々からこの程度の額を取り立てて回り、帳簿のことで投獄されたこともあったのです。
それこそが、この笑いを成り立たせています。ドン・キホーテが洞穴から報告するほかのことはすべて騎士道物語の世界のもので、そこでは距離はレグアで測られ、財宝は金の冠でやって来ます。ところが、魔法にかけられたお姫さまが友人をよこして、下スカートを担保に四レアル借りようとするのです。ここで文体ががらりと崩れます。サンチョはその崩れにすぐ気づき、全部嘘だと言います。そしてほぼ間違いなく、彼が正しいのです。
ほぼ、です。その細部はあまりに貧しく、あまりに具体的で、あまりに屈辱的なので、作り話をする人が選ぶとは思えません。セルバンテスはその反論を一度も書かずに、読者の心に植えつけます。この章から先、ドン・キホーテ自身も自分が何を見たのか確信が持てなくなり、信念を支える必要があるたびに洞穴の話に立ち返るようになります。ここが後編の要です。騎士が、自分の狂気が真実であってほしいと必要とし始める地点なのです。
セルバンテスの原文で · «Paciencia y barajar»
Paciencia y barajar
辛抱して、カードを切り直すことだ
ドゥランダルテが後編第23章で言う言葉で、わずか三語に一つの態度がまるごと込められています。彼は五世紀にわたって大理石の石板の上で魔法にかけられています。モンテシーノスが身をかがめ、ついに魔法を解く騎士がやって来たという吉報を伝えます。伝説全体が待ち望んできた瞬間です。ところが返ってくるのは、カード遊びの決まり文句、「配り直せ」です。感謝でも、希望でも、関心ですらありません。Barajar は、手が悪くて札を切り直すしかないときにすることで、スペイン語では今でもまさにその意味で、つまり「我慢してやり直せ」という意味でこの言い回しを使います。セルバンテスは、劇的な台詞を言う資格が誰よりもある人物に、小説中で最も拍子抜けする一言を与えています。笑いどころはドゥランダルテが無礼だということではありません。何であれ五百年も続けば、まさにこういう口調になるということなのです。
