レベルB2 · 第80課

腹をすかせた総督

島でいちばん豪華な食卓が目の前に並べられますが、杖を持った医者がどの料理も下げてしまいます。

ギュスターヴ・ドレの版画:木に縛られた少年を鞭打つ農夫に、馬上から立ち向かう騎士。
Gustave Doré, 1863. Public domain.

このレッスンで学ぶこと

読む前に

si hubiera と habría を使った文がたくさん出てきます。どれも起こらなかったことについての文です。サンチョが何を食べられたはずか、何を決して引き受けなかったはずか、どこにとどまっていたはずか。これは後悔の時制で、章の終わりには、サンチョには後悔することが山ほどあります。

やさしいスペイン語で読む物語

Sancho Panza llevaba medio día gobernando la ínsula Barataria y todavía no había comido nada.

サンチョ・パンサはバラタリア島を半日治めていましたが、まだ何も食べていませんでした。

Del juzgado lo llevaron a un palacio, y al entrar en la sala sonaron las chirimías.

法廷から宮殿へ連れて行かれ、広間に入るとチャルメラが鳴り響きました。

Salieron cuatro pajes a darle aguamanos, y él los recibió con mucha gravedad.

小姓が四人出てきて手に水を注ぎ、彼はそれをたいそう重々しく受けました。

La mesa era rica, el mantel limpísimo y los platos, muchos y muy variados.

食卓は豪華で、テーブルクロスは真っ白、料理は数多く変化に富んでいました。

Lo sentaron en la cabecera, porque en toda la mesa no había más que aquel asiento.

食卓には席がそれ一つしかなかったので、彼は上座に座らされました。

Un paje le puso un babador, y a su lado se colocó de pie un hombre callado.

小姓がよだれかけをつけ、無口な男が一人、彼の横に立ちました。

Aquel hombre llevaba en la mano una varilla de ballena y no la soltó en toda la comida.

その男は鯨のひげでできた細い杖を手にしていて、食事のあいだじゅうそれを放しませんでした。

Sancho tendió la mano hacia una fuente de fruta y comió un solo bocado.

サンチョは果物の皿に手を伸ばし、ひと口だけ食べました。

El hombre tocó el plato con la varilla y se lo quitaron delante de las narices.

男が杖で皿に触れると、皿は鼻先からさっと下げられてしまいました。

Lo mismo pasó con el segundo plato, y con el tercero, siempre con la misma limpieza de manos.

二皿目でも三皿目でも同じことが起こり、いつも同じ鮮やかな手ぎわでした。

Sancho preguntó si aquella comida se comía como los juegos de manos de las ferias.

サンチョは、この食事は縁日の手品のように食べるものなのかと尋ねました。

El hombre se presentó, y dijo que era médico y que estaba asalariado por la ínsula.

男は名乗り、自分は医者で、島から給料をもらっていると言いました。

Explicó que su oficio era cuidar la salud de los gobernadores, que le importaba más que la suya.

自分の仕事は総督の健康を守ることで、それは自分の健康よりも大事なのだと説明しました。

De ahí en adelante, cada plato tuvo su razón médica y su aforismo.

それからは、どの料理にも医学上の理由と格言がつきました。

La fruta era demasiado húmeda y el guisado demasiado caliente y demasiado especiado.

果物は水気が多すぎ、煮込みは熱すぎて香辛料が効きすぎているというのです。

Las perdices, dijo, eran dañosas, y citó en latín que la hartura de perdiz es malísima.

ヤマウズラは害になると言い、ヤマウズラの食べすぎは何よりも悪いとラテン語で引用しました。

Sancho señaló entonces una olla podrida que humeaba al fondo de la mesa.

そこでサンチョは、食卓の奥で湯気を立てている肉の大鍋煮込みを指さしました。

El médico contestó que aquello era lo peor de todo y que se dejase para los canónigos.

医者は、それこそ最悪の料理で、大聖堂の参事会員たちに任せておくべきだと答えました。

Y si Sancho hubiera probado una sola cucharada, según él, habría estado enfermo una semana.

医者によれば、サンチョがひとさじでも口にしていたら、一週間は寝こんでいただろうとのことでした。

Le ofreció en su lugar unos barquillos y unas tajadas finas de membrillo.

代わりに医者は、薄焼きの菓子とマルメロのペーストの薄切りを少しすすめました。

Sancho lo miró de hito en hito y le preguntó cómo se llamaba y dónde había estudiado.

サンチョは医者をじろじろと見て、名前は何か、どこで学んだのかと尋ねました。

Contestó que era el doctor Pedro Recio de Agüero, natural de un lugar llamado Tirteafuera.

医者は、ティルテアフエラという土地の出身の、ペドロ・レシオ・デ・アグエロ博士だと答えました。

Sancho miraba la mesa cargada y no llegaba a nada de lo que había encima.

サンチョはごちそうの並んだ食卓を見つめていましたが、その上の何一つ口にできませんでした。

Dijo que de aquel gobierno se moriría, y no de fiebre sino de hambre.

この統治で自分は死ぬだろう、それも熱病ではなく飢えで、と彼は言いました。

Dijo que a un gobernador se le mata igual quitándole el pan que dándole veneno.

総督を飢えさせるのは、毒を盛るのと同じくらい確実に殺すことだと言いました。

Añadió que en su casa había comido peor y con muchísimo más gusto.

さらに、家ではもっと粗末なものを食べていたが、ずっとおいしく味わっていたと付け加えました。

Al final estalló, se levantó de la silla y la cogió con las dos manos.

とうとう彼は爆発し、椅子から立ち上がって、それを両手でつかみました。

Todo encendido en cólera, amenazó con estrellársela en la cabeza al médico.

怒りに燃えて、それを医者の頭にたたきつけてやると脅しました。

Pidió pan, uvas y un pedazo de queso, y que se llevaran de allí las delicadezas.

彼はパンとブドウとチーズを一切れ求め、凝った料理は下げてくれと言いました。

Dijo que un oficio que no da de comer a su dueño no vale dos habas.

その職に就いている者を食わせない仕事など、豆二粒の値打ちもないと言いました。

Aquella noche le escribió a su amo una carta que dictó al secretario.

その夜、彼は書記に口述して、主人に手紙を書きました。

Si hubiera sabido lo que era gobernar, le decía, no habría dejado el campo por la ínsula.

統治とはどういうものか知っていたら、畑を捨てて島に来たりはしなかっただろう、と書いていました。

Contaba que había entrado en el gobierno con hambre y que saldría de él con más.

腹をすかせて職に就き、もっと腹をすかせて職を去ることになるだろう、と書きました。

Nunca había pensado que un plato lleno pudiera estar tan lejos de una boca.

料理を盛った皿が、口からあんなに遠くにありうるとは、思ってもみなかったのです。

Y sin embargo, al día siguiente volvió a la sala y siguió juzgando con el mismo tino.

それでも翌日、彼は法廷に戻り、前と同じように的確に裁き続けました。

El hambre no le quitó el juicio, solo le enseñó lo que es un gobernador.

飢えは彼の分別を奪いはせず、総督とは何かを教えただけでした。

Un hombre a quien todos sirven y a quien nadie da de comer.

誰もが仕えるのに、誰も食べさせてくれない男です。

語彙

総督の食卓

el maestresala
給仕頭
el aguamanos
手洗いの水
el babador
よだれかけ
el mantel
テーブルクロス
el manjar
料理
la fuente
大皿
la delicadeza
凝った料理、珍味
el bocado
ひと口

食べさせてもらえないもの

la olla podrida
肉の大鍋煮込み
la perdiz
ヤマウズラ
el guisado
煮込み
la conserva
砂糖漬け
el membrillo
マルメロのペースト
especiado
香辛料の効いた
húmedo
水気の多い
hartarse
腹いっぱい食べる

医者と怒り

la varilla de ballena
鯨のひげの杖
asalariado
給料をもらっている
el aforismo
医学の格言
la dieta
食事制限
dañoso
害になる
la cólera
激怒
de hito en hito
じろじろと、まともに
estrellar
たたきつける

食べていたら、具合が悪くなっていただろう

Si hubiera probado la olla, habría estado enfermo una semana.

Si hubiera sabido lo que era gobernar, no habría dejado el campo.

Si el médico se hubiera callado, Sancho habría cenado tranquilo.

これは起こらなかった過去のための文で、スペイン語は英語よりもこれに厳格です。枠はちょうど二つで、それぞれに一つの形が入ります。

si の側結果の側
si + hubiera または hubiese + 過去分詞habría + participle
Si hubiera probado la olla,habría estado enfermo.
Si hubiese dejado la ínsula antes,habría cenado en su casa.

ここでは Hubiera と hubiese は入れ替えられます。話し言葉では Hubiera のほうが一般的で、どちらも完全に正しい形です。

si を使う三つの文と、その見分け方

種類si の側結果の部分意味
現実si comese pone enfermo食べるといつも具合が悪くなる
現在の反事実si comierase pondría enfermoもし食べたら。実際には食べていない
過去の反事実si hubiera comidose habría puesto enfermo食べなかったし、何も起こらなかった

一つ目の種類では si のあとに直説法現在を使ってかまいませんが、si のあとに接続法現在を使うことは決してできないことに注意しましょう。✗ si coma は、どの種類であれスペイン語には存在しません。

混合型。とてもよく使われる

過去の原因が現在の結果をもたらすこともあり、スペイン語では各行から一つずつ取ってそれを表します。Si hubiera aceptado el gobierno, ahora estaría gordo。総督の職を引き受けていたら、今ごろ太っていただろう。si の側は過去、結果の側は過去未来(条件法)です。

耳にする三つ目の可能性

話し言葉やセルバンテスの文章では、結果の側にも hubiera が来ることがあります。si hubiera comido, hubiera estado enfermo。これは正しく、ごく普通の形です。正しくないのはその逆で、si の側に habría を置くことです。

「出て行け」という名の医者

ペドロ・レシオ・デ・アグエロ博士は三つの部品を組み立てた冗談で、どの部品も1615年のスペインの読者には通じたはずです。Recio は「厳しい」という意味。Agüero は「前兆」という意味で、サンチョはすぐに彼を Pedro Recio de Mal Agüero、つまり「不吉な前兆の」と格上げします。ティルテアフエラはシウダー・レアルに実在する村で、今もありますが、その名は tírate afuera(とっとと出て行け)という命令にそっくりに聞こえます。さらにセルバンテスは、彼にオスナで学位を取らせます。オスナは小さな大学で、この本には誰も認めない資格の代名詞として何度か登場します。

医学は当時の実際に忠実で、それがおかしさを生んでいます。ガレノス派の医者は食べ物を熱、冷、湿、乾に分類し、ほとんどあらゆるものを、足すよりも取り除くことで治療しました。医者が引用するラテン語 omnis saturatio mala, perdices autem pessima は、ヒポクラテスの伝統に実在する格言です。セルバンテスは同時代の医学によって多くのものを失っており、ここでの描き方に愛情はありません。

笑劇の下には、バラタリアの一連の場面が繰り返し示す政治的な論点があります。サンチョは、彼に仕えることだけが役目の家中の者たちに囲まれていて、その一人残らずが、人が生きるためにしなければならないことを妨げているのです。彼はないがしろにされているのではありません。金をかけ、申し分ない礼儀作法で、仕えられて死にかけているのです。そしてその冗談は、それを仕組んだ公爵夫妻のものです。

セルバンテスの原文で · «Y denme de comer, o si no, tómense su gobierno…»

Y denme de comer, o si no, tómense su gobierno, que oficio que no da de comer a su dueño no vale dos habas.

それから何か食べさせてください。でなければ総督の職をお返しします。勤める者を食わせない仕事なんて、豆二粒の値打ちもありませんからね。

サンチョは丁寧に、次に我慢強く、それから皮肉っぽくなり、ここで口調が崩れます。文法的には、これがどんな条件文かに注目する価値があります。このレッスンで学ぶ実現不可能な種類ではなく、命令形に o si no が続く、ごく普通の現実の条件文で、バラタリアの場面全体で誰かが口にするいちばん率直な文です。No vale dos habas は決まった言い回しで、今も no vale un pimiento や no vale nada の形で使われます。安い野菜で価値を測るスペイン語の表現の一群に属しています。その底にある考えは、セルバンテスが小説のこのあたりで何度も立ち返るものです。サンチョは権力も儀式もドンの称号も望んでいません。夕食が欲しいのです。そして夕食を出せない職は、彼がそれに課す唯一の試験に落ちたのです。

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