レベルB1 · 第64課

鏡の騎士

別の遍歴の騎士が、ドン・キホーテを打ち負かしたと自慢します。二人は夜明けに戦い、負けた者の兜の下からは見覚えのある顔が現れます。

ギュスターヴ・ドレの版画:満月の下、石の水槽に置いた鎧のそばで夜通し見張りに立つ騎士。
Gustave Doré, 1863. Public domain.

このレッスンで学ぶこと

読む前に

二人の騎士が一晩じゅう自慢し合うので、このレッスンは比較だらけです。読みながら3つの型を集めましょう。2つのものを比べる普通の型、あるものが集団全体の中でいちばんだと言う型、そして3つ目は、ものを節全体と比べる型で、más と動詞のあいだに思いがけない語が入ります。

やさしいスペイン語で読む物語

Una noche, en un bosque oscuro, don Quijote y Sancho oyeron quejarse a alguien.

ある夜、暗い森の中で、ドン・キホーテとサンチョは誰かが嘆いているのを耳にしました。

Era otro caballero andante, con la armadura cubierta de espejitos redondos.

それは別の遍歴の騎士で、鎧は小さな丸い鏡で覆われていました。

El desconocido hablaba muy alto, como si quisiera que lo oyera el bosque entero.

見知らぬ騎士は、森じゅうに聞かせたいかのように大声で話していました。

Decía que su dama, Casildea de Vandalia, era la más hermosa de la tierra.

自分の思い姫カシルデア・デ・バンダリアは地上でもっとも美しい、と彼は言いました。

Añadía que él era el más desdichado de todos los hombres del mundo.

そして、自分は世のすべての男の中でもっとも不幸な者だ、と付け加えました。

Después dijo algo mucho peor, que a don Quijote le cambió la cara.

それから彼はもっとひどいことを言い、ドン・キホーテの顔色が変わりました。

Contó que había vencido en combate al mismísimo don Quijote de la Mancha.

ほかならぬラ・マンチャのドン・キホーテその人を、一騎打ちで打ち負かしたと言うのです。

«Eso es imposible», respondió nuestro caballero saliendo de entre los árboles.

「そんなことはありえぬ」とわれらが騎士は木々の間から出てきて答えました。

«Yo soy don Quijote y a mí no me ha vencido nadie todavía».

「わしこそドン・キホーテ、まだ誰にも負けたことはない。」

«Vos habréis vencido a alguien parecidísimo a mí, pero no a mí».

「おぬしが倒したのはわしにそっくりな誰かであって、わしではない。」

Los dos decidieron pelear en cuanto hubiera luz suficiente para verse.

二人は、互いの姿が見えるほど明るくなったらすぐに戦うことに決めました。

Mientras tanto, los escuderos se apartaron un poco a charlar entre ellos.

そのあいだ、二人の従士は少し離れて、おしゃべりを始めました。

El otro llevaba unas alforjas mucho mejor provistas que las de Sancho.

相手の従士は、サンチョのものよりずっと中身の詰まった鞍袋を持っていました。

Había en ellas más vino y más pan blanco del que Sancho recordaba.

そこには、サンチョが覚えている以上のワインと白パンが入っていました。

Con la primera luz, Sancho miró la cara del Caballero de los Espejos.

夜が明けるとすぐ、サンチョは鏡の騎士の顔を見ました。

Se quedó helado, porque era igualito que el bachiller Sansón Carrasco.

サンチョは凍りつきました。その男は学士サンソン・カラスコにうり二つだったのです。

Tenía la misma nariz, la misma boca y hasta la misma manera de mirar.

同じ鼻、同じ口、そして人を見るまなざしまで同じでした。

Empezó el combate antes de que nadie tuviera tiempo de explicar nada.

誰も何ひとつ説明する暇もないうちに、戦いが始まりました。

Rocinante corrió más deprisa de lo que corría el caballo del otro.

ロシナンテは、相手の馬が走るよりも速く走りました。

Don Quijote derribó a su enemigo del primer encuentro, sin apenas esfuerzo.

ドン・キホーテは最初のぶつかり合いで、ほとんど力も使わずに敵を打ち倒しました。

En el suelo, el vencido tenía exactamente la cara del bachiller del pueblo.

地面に倒れた敗者は、村の学士とまったく同じ顔をしていました。

Sancho gritó que aquello era lo más raro que había visto en su vida.

サンチョは、こんな妙なものは生まれてこのかた見たことがない、と叫びました。

Don Quijote explicó que era el encantamiento más asombroso de cuantos conocía.

ドン・キホーテは、これは自分の知るかぎりもっとも驚くべき魔法だ、と説明しました。

Dijo que los magos son tan hábiles como crueles y no se cansan nunca.

魔法使いというものは残酷であると同時に巧みで、決して疲れることがないのだ、と言いました。

Después subió a Rocinante y siguió su camino tan tranquilo como siempre.

それからロシナンテにまたがり、いつもどおり落ち着きはらって先へ進みました。

Detrás quedó Sansón Carrasco, más furioso de lo que había estado nunca.

あとには、これまでになく激怒したサンソン・カラスコが残されました。

語彙

比べる

más que
〜より多く
menos que
〜より少なく
tan como
〜と同じくらい(形容詞・副詞)
tanto como
〜と同じくらい(名詞・動詞)
igual que
〜と同じ
parecido a
〜に似た
mejor que
〜よりよい
peor que
〜より悪い

最高のもの

el más de
〜の中でいちばん
el mejor de
〜の中で最良の
sin par
比類のない
hermosísima
たいへん美しい
parecidísimo
驚くほどよく似た
mismísimo
まさにその
igualito
うり二つ
asombroso
驚くべき

けんか

la armadura
鎧
el espejo
鏡
el encuentro
突撃
derribar
打ち倒す
el vencido
敗者
el escudero
従士
hábil
巧みな
furioso
激怒した

比較級と最上級

Sus alforjas estaban mejor provistas que las de Sancho.

Casildea era la más hermosa de la tierra.

Rocinante corrió más deprisa de lo que corría el otro.

スペイン語の比較は規則的で、すぐに覚えられます。つまずくのは決まった3つの箇所で、このレッスンではそこを攻略します。

1. 3つの基本の型

スペイン語英語
más deprisa que el otroもう一頭より速く
menos vino que Sanchoサンチョより少ないワイン
tan hábil como cruel残酷であると同時に巧みな
tanto pan como yoわたしと同じくらいのパン

Tan は形容詞や副詞と、tanto は名詞や動詞と使います。そして tanto は一致します。tanta agua、tantos libros、tantas piedras。

2. que が de になるとき

これが最初の本当の落とし穴です。スペイン語は2つの場合に de に切り替えます。

後ろに来るものスペイン語英語
数más de doce mil libros一万二千冊以上の本
節全体más deprisa de lo que corría el otroもう一頭が走るよりも速く
名詞を伴う節más vino del que recordaba彼が覚えている以上のワイン

練習すべきなのは2行目と3行目です。英語ではどこでも than、日本語ではどこでも「より」なので、気づかせてくれる合図がありません。規則は機械的です。比較のあとに動詞が来るなら de lo que が必要です。比べているものが名詞なら、冠詞をそれに一致させて del que、de la que、de los que となります。

3. 最上級

スペイン語英語メモ
la más hermosa de la tierra地上でもっとも美しいde, never en
el más desdichado de todos誰よりも不幸な同じ
el mejor de la compañía一座でいちばん上手な不規則な形
hermosísima息をのむほど美しい集団は関係しない

語尾 -ísimo は比較ではまったくありません。ただ音量を上げるだけで、話し言葉のいたるところに出てきます。parecidísimo、guapísimo、malísimo。語幹が硬い音で終わるときはつづりが変わります。rico は riquísimo に、largo は larguísimo になります。そして mismísimo は特別で、まさにその人という意味です。el mismísimo don Quijote のように使います。

4. 4つの不規則形

形容詞比較級
buenomejor
malopeor
grandemayor
pequeñomenor

質について más bueno や más malo とは言いません。más mejor も決して言いません。Mayor と menor は、日常のスペイン語ではふつう、大きい・小さいよりも、年上・年下を意味します。

鏡のような好敵手

この変装は、ガラスでできた冗談です。小さな鏡に覆われた騎士とは、こちらの顔を映して見せる騎士のことで、鎧の中の男は、ドン・キホーテとまったく同じものになりすまして道に出てきた隣人です。好敵手は鏡像であり、セルバンテスはひと言の解説もなく、衣装にそれを語らせています。

その裏にある計画は実際的なものです。サンソン・カラスコと司祭と床屋は、老人を家に連れ戻すには一騎打ちで打ち負かし、敗者の償いとして一年間家にとどまることを課せばよい、と話し合って決めていました。牛車の檻の再来で、誘拐から芝居へと格上げされたものです。そしてそれは失敗します。学士は鎧を借りることはできても、ドン・キホーテを危険な相手にしているもの、つまり生きようが死のうが本当に気にしていないという点は借りられないからです。

彼は戻ってきます。ずっとあとになって、バルセロナの浜辺で、同じ男が銀月の騎士として現れ、勝利し、一年間家にいることを課します。その敗北が小説の終わりの始まりです。森でのこの夜を覚えている読者は、ドン・キホーテを打ち倒すのが巨人でも魔法使いでもなく、よい考えを持ち、二度目の挑戦をした隣人であることに気づくでしょう。

セルバンテスの原文で · «Llámola sin par porque no le tiene…»

Llámola sin par porque no le tiene, así en la grandeza del cuerpo como en el estremo del estado y de la hermosura

比類なき方と呼ぶのは、並ぶ者がないからです。そのお体の気高さにおいても、ご身分と美しさの極みにおいても

後編第14章、鏡の騎士の口から出る言葉で、このレッスンがそのまま一皿に盛られています。Sin par は否定によって作られた最上級です。集団の中のいちばんではなく、その集団にはひとりしかいないと言い張っているのです。続けて彼はその言葉を説明します。porque no le tiene、つまり彼女には並ぶ者がいないから。遍歴の騎士が貴婦人をほめるときに持ち出す、まさに堂々めぐりの理屈です。Así… como は今日の tanto… como の格式ばった祖先で、2つのものを釣り合わせる同等比較です。そして el estremo は最高の度合い、それより先には何もない点のことです。つづりは1615年のもので、語頭の e が extremo に落ち着く前の形です。同じ短縮は、小説のほかの箇所でも extraño の代わりの estraño に残っています。この文がただ壮大なだけでなくおかしいのは、並べられたものの最初の項目のせいです。身分や美しさよりも先に挙げる美点として、彼は la grandeza del cuerpo、つまり体の大きさを選んでいるのです。恋する男がまず口にするとは、読者が予想もしないものです。

この文法項目を単独のページで

短い答え、ほかのレッスンでの同じ項目、そして避けたい間違い。