レベルA2 · 第30課

霊薬と毛布

体じゅうが痛みます。ドン・キホーテは奇跡の薬を煮立て、サンチョがそれを試し、中庭では毛布が彼を待っています。

ギュスターヴ・ドレの版画:槍と盾を持って家から馬で去っていくドン・キホーテ。二人の女性が後を追い、庭ではヤギが草を食み、奥には農家の門が見える。
Gustave Doré, 1863. Public domain.

このレッスンで学ぶこと

読む前に

今日は章全体が痛みに満ちているので、体の語彙が自然に出てきます。何よりも次の点に注目しましょう。スペイン語では決して I hurt my head(私は頭を痛める)のようには言いません。me duele la cabeza と言い、頭のほうが文の主語になります。

やさしいスペイン語で読む物語

Por la mañana a don Quijote le dolía todo el cuerpo.

朝になると、ドン・キホーテは体じゅうが痛みました。

Le dolían la cabeza, la espalda y las costillas.

頭も、背中も、肋骨も痛みました。

A Sancho le dolían los hombros y no podía levantar los brazos.

サンチョは肩が痛くて、腕を上げられませんでした。

«Amigo, conozco la receta de un bálsamo que cura cualquier herida.»

「友よ、わしはどんな傷でも治す霊薬の作り方を知っておる。」

Sancho bajó y pidió al ventero aceite, vino, sal y romero.

サンチョは下りていき、宿の主人に油とワインと塩とローズマリーを頼みました。

Don Quijote lo mezcló todo y lo coció mucho rato en una olla.

ドン・キホーテはそれを全部混ぜ合わせ、鍋で長いこと煮ました。

Luego rezó más de 80 oraciones sobre el líquido caliente.

それから熱い液体に向かって80回以上も祈りを唱えました。

Bebió un buen trago y enseguida empezó a vomitar.

彼はそれをぐいと飲み、すぐに吐き始めました。

Vomitó, sudó mucho y se durmió tres horas seguidas.

彼は吐き、汗をたっぷりかき、3時間ぶっ通しで眠りました。

Al despertar se encontraba mejor y creía de verdad en su medicina.

目を覚ますと気分がよくなっていて、自分の薬を本気で信じました。

Sancho bebió lo que quedaba en la olla, con mucha esperanza.

サンチョは大いに期待して、鍋に残っていたものを飲みました。

Su estómago no era tan fino como el de su señor.

彼の胃は、主人の胃ほど繊細ではありませんでした。

El pobre escudero sudó, tembló y lo pasó fatal durante dos horas.

哀れな従士は汗をかき、震え、2時間ものあいだひどい目にあいました。

Al final le dolía el cuerpo más que antes del bálsamo.

結局、霊薬を飲む前よりも体が痛くなってしまいました。

Don Quijote quiso salir a buscar aventuras aquella misma mañana.

ドン・キホーテはその朝すぐに冒険を求めて出発したがりました。

El ventero le pidió el dinero de la cena y de las camas.

宿の主人は、夕食代と宿代を払うよう彼に求めました。

El caballero contestó que los caballeros andantes nunca pagan en las ventas.

騎士は、遍歴の騎士は宿屋で決して支払いをしないものだと答えました。

Salió por la puerta sin mirar atrás y dejó allí a Sancho.

彼は振り返りもせずに門から出ていき、サンチョを置き去りにしました。

Unos hombres alegres cogieron al escudero y lo pusieron sobre una manta.

陽気な男たちが従士をつかまえ、毛布の上に乗せました。

Lo lanzaron al aire muchas veces, en mitad del corral.

彼らは中庭の真ん中で、何度も彼を宙に放り上げました。

Don Quijote oyó los gritos, pero estaba demasiado molido para saltar el muro.

ドン・キホーテは叫び声を聞きましたが、体が痛くて塀を乗り越えられませんでした。

Al final lo dejaron y Maritornes le trajo agua del pozo.

ようやく男たちは彼を放し、マリトルネスが井戸から水を汲んできてくれました。

Sancho prefirió vino. Ella lo pagó de su propio dinero.

サンチョはワインのほうがいいと言いました。彼女は自分のお金でそれを買ってやりました。

Los dos salieron de la venta sin pagar nada y sin las alforjas.

2人は何も払わずに、鞍袋も持たずに宿屋を後にしました。

語彙

体

la cabeza
頭
la espalda
背中
la costilla
肋骨
el hombro
肩
el brazo
腕
el estómago
胃

具合が悪い

doler
痛む
el dolor
痛み
vomitar
吐く
sudar
汗をかく
la herida
傷
curar
治す、手当てする

宿屋と毛布

el bálsamo
霊薬
la olla
鍋
la manta
毛布
el corral
裏庭、家畜の囲い
las alforjas
鞍袋
pagar
払う

体と動詞 doler

A don Quijote le dolía todo el cuerpo.

Le dolían la cabeza, la espalda y las costillas.

A Sancho le dolían los hombros.

これは gustar と同じ仕組みで、それがわかれば何の苦労もありません。人は主語ではありません。主語は体の部分です。

誰に1か所複数か所
a míme duele la cabezame duelen los brazos
a tite duele la cabezate duelen los brazos
a él, a ella, a ustedle duele la cabezale duelen los brazos
a nosotrosnos duele la cabezanos duelen los brazos
a vosotrosos duele la cabezaos duelen los brazos
a ellos, a ustedesles duele la cabezales duelen los brazos

me duele la cabeza を the head is hurting to me(頭が私に痛みを与えている)と読めば、語尾の謎は消えます。肋骨が2本なら、動詞も複数です。me duelen las costillas。

冠詞を使い、所有詞は使わない

英語では持ち主を示します。my head hurts(私の頭が痛い)。スペイン語では me ですでに示しているので、ただの冠詞を使います。me duele la cabeza。me duele mi cabeza と言うのは、この分野でいちばん耳につく間違いです。同じ規則が体全体に当てはまります。se rompió el brazo、le cogió la muñeca、levantó la mano。

名前を添えてはっきりさせる

le や les はあいまいなので、スペイン語ではよく文頭に a と名前を加えます。A Sancho le dolían los hombros。この a は飾りではなく、誰の肩なのかを言うための方法です。ほかの人称でも、強調のために同じやり方が使えます。a mí me duele todo。

今日必要な体の部分

スペイン語英語複数
la cabeza頭las cabezas
la espalda背中las espaldas
el hombro肩los hombros
la costilla肋骨las costillas
el brazo腕los brazos
la pierna脚las piernas
el estómago胃los estómagos
la boca口las bocas

具合を言う

同じ質問に答える言い方をあと3つ。どれもスペインの薬局でごく普通に使われます。

スペイン語英語
tengo dolor de cabeza頭が痛い
estoy malo, estoy mala具合が悪い
me encuentro mejor気分がよくなった
me encuentro peor気分が悪くなった

me encuentro に注目しましょう。文字どおりには I find myself(自分を見いだす)で、英語なら I feel と言うところでスペイン語はこう言います。3時間眠って目覚め、霊薬が効いたと確信したドン・キホーテに必要な動詞です。

医術、霊薬、そして毛布

フィエラブラスはフランスの騎士道物語に登場する巨人で、キリストの遺体に塗られた香油の樽を2つ持っていました。それを飲めば、どんな傷も治ったのです。これは実在する本で、ドン・キホーテはそれを読んでいます。彼がそれをどう扱うかが、この人物の笑いのすべてです。物語の小道具を処方箋として扱い、しかも薬の調合まで正しいのです。油、ワイン、塩、ローズマリーは、田舎で傷の手当てに使う標準的な材料でした。作り話なのは、それを飲むところだけです。

1605年の医学は、まだ四体液説に基づいていました。健康とは体液のバランスであり、治療とは悪い体液を体から出すこと、つまり瀉血や下剤や発汗によって出すことでした。ですからドン・キホーテが吐き、汗をかき、3時間眠った後、治療が効いたと本気で確信して目覚めるのは、当時の医学理論に照らせば愚かなことではありません。同じ量を飲んだサンチョが、対照実験の役を果たしています。

最後の毛布も作り話ではありません。Mantear は実際にあった罰で、召使いや物乞い、謝肉祭のときには犬に対して行われました。遊びではなく、公衆の面前での辱めだったのです。サンチョはこれを決して忘れません。本の最後まで何度も持ち出し、後編に入っても、40章も後になってまだ主人に対する恨みとして数えています。

セルバンテスの原文で · «Levántose Sancho con harto dolor de sus huesos…»

Levántose Sancho con harto dolor de sus huesos, y fue ascuras donde estaba el ventero.

サンチョは骨の痛みをこらえて起き上がり、暗がりの中を宿の主人のところへ行きました。

このレッスンの名詞 dolor が、そこから生まれる動詞 doler と並んで原文に出てきます。ここでの Harto は、今日の意味の「うんざりした」ではなく、「たっぷり」という意味です。Ascuras は a oscuras の古いつづりで、1語で書かれています。そして Levantóse に注目しましょう。1605年には、文頭の過去形の動詞の後ろに代名詞をつけるのが普通でした。今日なら Se levantó と書きます。この倒置はセルバンテスのどのページにも出てくるので、今のうちに読めるようにしておきましょう。

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