C1 · 前編第8章
ビスカヤの従士:わざと崩したカスティーリャ語
バスク地方から来た従士がドン・キホーテに話しかけるカスティーリャ語は、どの行も間違っていて、しかも毎回同じように間違っています。セルバンテスは紙の上で外国なまりを作り出しました。そのやり方はこうです。冠詞が抜け、動詞の人称が違い、語順がおかしい。ドン・キホーテは完璧なスペイン語で、続いて二百年前のスペイン語で答えます。
セルバンテスが書いたままの抜粋
ミゲル・デ・セルバンテス、前編第8章。原文のまま。
Anda, caballero que mal andes; por el Dios que crióme, que, si no dejas coche, así te matas como estás ahí vizcaíno. Entendióle muy bien don Quijote, y con mucho sosiego le respondió: — Si fueras caballero, como no lo eres, ya yo hubiera castigado tu sandez y atrevimiento, cautiva criatura. A lo cual replicó el vizcaíno: — ¿Yo no caballero? Juro a Dios tan mientes como cristiano. Si lanza arrojas y espada sacas, ¡el agua cuán presto verás que al gato llevas! Vizcaíno por tierra, hidalgo por mar, hidalgo por el diablo; y mientes que mira si otra dices cosa. — ¡Ahora lo veredes, dijo Agrajes! —respondió don Quijote.
行け、騎士、悪い運と一緒に。おれを作った神にかけて、馬車を離れない、おれここにいるビスカヤ人であるのと同じくらい確かに、おまえ自分を殺す。ドン・キホーテは彼の言うことをすっかり理解し、ひどく落ち着いて答えた。もしおまえが郷士であったなら、そうではないが、わしはとっくにおまえの愚かさと無礼を罰していたぞ、哀れなやつめ。これにビスカヤ人は答えた。おれ郷士でない? 神に誓う、おまえ嘘つく、おれキリスト教徒であるのと同じくらい。槍を投げ捨てて剣を抜くなら、すぐに見る、誰が猫を水に運ぶか。陸でビスカヤ人、海で郷士、悪魔に逆らって郷士、ほかのこと言うなら、見ろ、おまえ嘘つく。今に見ておれ、とアグラヘスが言ったようにな、とドン・キホーテは答えた。
同じ内容を、今日書かれるスペイン語で
二つを並べて読んでみましょう。両者の間で変わったことが、このレベルの学習内容です。
Vete, caballero, y que te vaya mal. Por el Dios que me creó, que si no dejas el coche, tan cierto como que soy vizcaíno que te mato. Don Quijote lo entendió muy bien y le respondió con mucha calma: Si fueras caballero, que no lo eres, ya habría castigado yo tu tontería y tu atrevimiento, miserable criatura. A lo que el vizcaíno replicó: ¿Que yo no soy caballero? Juro a Dios que mientes, tan cierto como que soy cristiano. Si tiras la lanza y sacas la espada, ¡ya verás qué pronto te gano! Vizcaíno por tierra, hidalgo por mar, hidalgo a pesar del diablo, y mira que mientes si dices otra cosa. ¡Ahora lo veréis, como dijo Agrajes!, respondió don Quijote.
形ごとの変化
| 原文 | 現在 | なぜ大事か |
|---|---|---|
| crióme | me creó | 点過去に付いた前接代名詞。1605年には文頭なら普通でしたが、que のあとでは使わないので、当時でも間違いです。 |
| si no dejas coche | si no dejas el coche | 冠詞がありません。ビスカヤ人は話の中でずっと冠詞を落とします。 |
| así te matas | así te mato | 動詞の人称が違います。「おまえを殺す」と言いたいのに「おまえは自分を殺す」と言っています。 |
| como estás ahí vizcaíno | tan cierto como que soy vizcaíno | 自分の素性にかけて誓い、ここでもまた人称を間違えています。 |
| ya yo hubiera castigado | ya habría castigado yo | 主節での接続法過去完了。今でも正しく、今でも多くのスペイン人がこう言います。 |
| tan mientes como cristiano | mientes, tan cierto como que soy cristiano | ひとつの節に押し込まれた誓いの言葉。 |
| si lanza arrojas y espada sacas | si tiras la lanza y sacas la espada | 動詞の前の目的語と冠詞の欠落。セルバンテスが最初から最後まで彼に与えている型です。 |
| el agua cuán presto verás que al gato llevas | verás qué pronto llevo el gato al agua | Llevar el gato al agua で「勝ちを収める」。彼はこの慣用句をかき混ぜて、別の意味にしてしまいます。 |
| mientes que mira si otra dices cosa | mira que mientes si dices otra cosa | 動詞が先、目的語が最後で、どの語も本来の位置にありません。 |
| veredes | veréis | 古い語尾 -edes。ドン・キホーテは崩れたカスティーリャ語に、大昔のカスティーリャ語で答えます。 |
構文
セルバンテスはビスカヤ人のカスティーリャ語を、でたらめな雑音ではなく、いくつかの一貫した誤りから組み立てています。冠詞が消え、目的語が動詞の前に出て、代名詞が間違った場所に来て、動詞の人称がずれる。この一貫性があるからこそ、スペイン語の読者は一語残らず理解しながら、それでも外国人の話し方を聞き取るのです。ドン・キホーテの返事は非の打ちどころがなく、現代のスペイン語なら過去未来完了を使うところに接続法過去完了を使っていますが、それが当時の普通の言い方でした。
スペイン語の読者に聞こえるもの
ここでは二つの固定観念が同時に演じられています。1605年のバスク人は、下手なカスティーリャ語と、自分たちは誰もが生まれながらの郷士だという主張で有名でした。従士はその両方を一息でやってのけます。自分の身分を言い張るまさにその瞬間に、文法が崩れるのです。そこでドン・キホーテは『アマディス』の一行 ahora lo veredes, dijo Agrajes で答えます。これはすでにことわざのような引用句でした。こうして戦いは、カスティーリャ語を話せない男と、本の中のカスティーリャ語しか話せない男のあいだで始まるのです。
この講座のどこでこの準備ができるか
- 不規則な点過去:ser, ir, estar, tener, hacer第22課ビスカヤの従士
